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言葉の花びら

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「ごめんね」その二

         私は、最後まで信じてあげることが出来なくて・・・ごめんね。


家の近くにある駅はJRと私鉄が交差する駅ですから、朝、夕は大変に混雑しています。

ある日、私は外出で夕方の帰宅を急いでいたら、後ろから来た男性が

「ちょっと、すいませんが」 「えっ、私ですか?」 「そうです」


「僕は今年から、この町で働くことになった者です。ついてはお客様の勧誘、

拡大を図らなくてはならないので・・・・」


「ごめんなさい。私は急いでますから」 「直ぐに済みますから~」 「私はお断りします」

「お願いです。一寸でいいですから」・・・振り返れば沢山の人波が押し寄せてきている。


「見て下さいよ。次々に後ろから人が来ているではありませんか。何も嫌がる私でなくて

他の人の所へ行って下さい。とにかく、私は急いでいますから」と言って早足で歩くと

歩調を合わせてついて来る。「ちょっと~、ついて来るのは止めて」と言ったのですが・・・。


「用事は何ですか?」 「この先に在る営業所に来てほしいのです」 

「それなら私でなくてもいいことでしょ」と言って男性の顔を見ると、いかにも新卒らしい

男性と言うよりは、男の子?の顏に汗が滲んでいました。


私は破れかぶれになった?とでも言うのでしょうか(繁華街だから大丈夫かな、と思って

早く終わらせる積りで男性に促されるままについて行くことにしました。


それでも、ちょっと人通りが少なくなった所へ男性が向かって行くので不安になり

「何処まで行くの?」と聞いてしまいました。「この先の工事中の事務所です」


辿り着くと、その建物の周辺には人の気配が見えないはてなマーク


「何なの、何処へ案内しようとしているの?」 「すいません、エレベータで二階です」

「えっ、人の姿が見えないでしょ。二階が何だというの?」


結局、私は促されるままに二階まで上がってしまいました。エレベーターの中で

激しい動悸を覚えながら・・・。


二階に着くと奥の扉の中から、女性達の賑やかな話声が聞こえてきました。

男性は扉を開けて「お客様をお連れしました」 そう言ったかと思うと、甲斐甲斐しく

私にお茶を用意して下さったのです。


生命保険会社の新規営業所立ち上げの最中だったそうで、所長と呼ばれる女性が

その男性の労をねぎらい、私にも丁寧な挨拶をして下さったけれど、それ以上の

話を聞く時間がないので、直ぐに帰ることにしました。


すると男性は「駅まで送ります」と言って、又ついて来ながら 「強引な事をして申し訳

ありませんでした。自分は新規採用で、今の事務所で働く事になりました」


「私の家族は貴方が働く保険会社に入っているので、勧誘は無理ですよ」と言ったら

「今日は、事務所に行って下さっただけで良かったのです。有難うございました」

そう言って別れ際に名刺を手渡されました。


帰る道々、何てしつっこい男性?最初は、そう思っていた自分がいて、次に、この人は

変質者?最後には強姦する・・・?そこまで考えていながらついて行く自分は間違っている。

 

そう思ったのですが究極は、必死になって何かを訴えているような姿に

私は負けてしまったのかな、と思いました。それは我が子の姿と重なって。


翌日、私はその男性から受け取った名刺の営業所宛てで、男性に手紙を書きました。

<全力投球ですね、応援しています> そんな内容だったと思います。


すると、男性から折り返し返事がきました。


<先日は、強引なお願いをして申し訳ありませんでした。慣れない中、毎日が必死です。

そんな自分に手紙を下さって嬉しかったです。

頂いた手紙を大切にして、これからも頑張っていきます> そう結んでありました。


事の、顛末を子どもたちに話したら「そうか~。必死だったんだね。男性は」

「お母さんは、よくついて行ったね~」と様々でした。


私は毎年、就職活動中の方たちを目にすると、その時の男性を思い出します。


今も頑張っているでしょうか?


「あの時はごめんね。変に疑ったりしてね」おばちゃんは、今でもそう思っています。


                                      *:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆










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