Welcome to my blog

言葉の花びら

ARTICLE PAGE

まだ見ぬ花“トリテリア”

私の母は、二人の乳呑み児を残して逝った母親の代わりとして、父の許に嫁ぎました。

その母も、蟯虫に身体中をむしばまれ、七転八倒の苦しみの中で、

二歳になった私と、先の異母姉兄を父に託して逝ったそうです。


その後二度母が代わり、今の母になって間もなく、私が異母兄弟であることを知らされました。

その時はさほどショックのようなものを感じていませんでしたし、

亡き母への思慕の念も抱かなかったのですけれど、

私が二十歳の時でしたか、母方の従兄が私を探し尋ねに来てくれたことで、

突然身体中の血がたぎり、母の故郷を一目見たく、矢も楯も堪らず、

従兄を頼って九州へと一人飛ぶようにして行きました。


父も母も生家がお寺でしたので、伯母たちもお寺に嫁いでいました。

一番年が上に当たる伯母のお寺へ、地図を頼りに尋ねて行った時の伯母の驚き様は、

今も忘れることができません。


亡き母とは本当に仲良かったそうで、「妹が帰って来た。」と言って、

私を涙の中で迎えてくださいました。


母の思い出話を ぽつりぽつりとしてくださった中で、今も心に刻まれているのは

母が「トリテリア」という小さな薄紫の花を愛して、大切に育てていたということです。


種苗店で、お花屋さんで、その花を捜しましたが、聞いたこともない花だと言われました。

紫色が私は好きではありませんでしたが、あの鬱蒼と生い茂るお寺の境内の深い緑の中に

静かに片隅に咲くという花を想う時、それが私の母に思えてならないのです。


年を重ねるごとに


記憶の中に何もない母に逢いたい


という気持ちが強くなってきてなりません。



0 Comments

Leave a comment